
みなさんこんにちは!あじたまごです!
2026年7月24日、医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査・安全業務委員会で、ちょっと見過ごせないニュースが出ました。
PMDAが「AI活用に関する基本的考え方」を今年度中にも公表する方向で検討していることを明らかにしたのです(薬事日報の報道による)。
これまで「CRAはAIに仕事を奪われるのか」という話は、市場調査データや企業側の戦略発表を根拠にした一般論として語られることが多かったです。
実際、私自身も以前の記事でAI臨床試験市場の拡大や武田薬品の戦略などを紹介しながら、CRAの将来性を解説しました。
今回はそれとは質の違うニュースです。
規制当局そのものが「GxP業務でAIをどう扱うか」の指針づくりに動き出した、という一次情報ドリブンの続報だからです。
この記事では、GPM(Global Project Manager)として社内のAIツール導入検討にも関わっている立場から、7月24日に何が起きたのか、海外の規制当局(FDA・EMA)の動きと比べてどう位置づけられるのか、そしてCRAの実務・キャリアにどう波及しうるのかを整理してお伝えします。
PMDA公式サイトの情報も踏まえながら、断定を避けて丁寧に見ていきます。
PMDAがAI活用の基本的考え方を年度内公表へ|何が起きたのか

結論から言うと、PMDAは「業界側(製薬企業・CRO)のGxP業務におけるAI活用について、公式な考え方を年度内に示す可能性がある」という段階にあります。
まだ「公表する」と確定したわけではなく、「公表する方向で検討している」という段階である点は正確に押さえておきたいところです。
2026年7月24日の審査・安全業務委員会で明らかになったこと
薬事日報の報道によると、PMDAは2026年7月24日に開かれた審査・安全業務委員会で、AI活用に関する基本的考え方を今年度中にも公表する方向で検討していることを明らかにしました。
会議自体は令和8年度第1回審査・安全業務委員会として、令和7事業年度の業務実績や令和8年度計画などをあわせて議論する場でした。
つまり、単独のAI専門会議ではなく、PMDAの年次業務レビューの中でAI活用方針の検討状況が触れられた、という位置づけです。
派手な発表というより、「地ならしが進んでいる」段階と捉えるのが実態に近いでしょう。
日本製薬団体連合会(日薬連)の要望とPMDAの反応という構図
この動きの背景には、業界団体側からの働きかけがありました。
日本製薬団体連合会(日薬連)安全性委員会委員長は、製薬企業側でもAI活用の枠組みを検討中であるものの、「GxP業務の中でAIを活用することには、まだためらいがある」と指摘しています。
GxPとは、医薬品の開発・製造・品質・安全管理などに関する各種規制基準の総称です。
私自身、CRO・製薬企業の現場を見てきた立場から言うと、この「ためらい」の感覚はとてもよく分かります。
GxP業務は監査証跡・データインテグリティが厳しく問われる世界です。
便利そうなAIツールがあっても、「規制当局がどう見るか分からない」という不確実性がある限り、企業は導入に踏み切りにくいものです。
今回のPMDAの動きは、まさにこの不確実性を減らすための一歩だと理解できます。
PMDAはすでに自分たちの業務向けのAI活用行動計画を持っている
ここが今回いちばんお伝えしたい情報利得のポイントです。
実は、PMDAには性質の異なる2つのAI関連の取り組みがあります。
1つ目は、PMDAが2025年10月10日に公表した「PMDA業務に対するAI活用行動計画」です。
これはPMDA自身が、期待される役割を果たすために組織全体の業務遂行能力を進展させる手段として、AI関連技術を自らの審査・安全対策業務に導入・活用していくための計画です。
いわば「PMDAの中の人がAIをどう使うか」の話です。
2つ目が、今回7月24日に検討状況が明らかになった、業界側(製薬企業・CRO)のGxP業務におけるAI活用の基本的考え方です。
こちらは「企業やCRO・CRAがAIをどう使ってよいか」という、私たち業界側に直接関わってくる指針です。
この2つを混同すると理解がずれるので、記事や情報を読むときは「誰の業務についての話か」を意識して見ることをおすすめします。
海外の規制当局(FDA・EMA)はすでにAI活用の指針を示している|PMDAとの比較

結論から言うと、AI活用に関する規制上の指針という点では、日本のPMDAは国際的にやや後発です。
米国FDAと欧州EMAは、すでに具体的な指針を公表済みだからです。
FDA・EMAが2026年1月に共同公表した「AI活用に関する10の指導原則」
FDAとEMAは2026年1月14日、共同で「Guiding Principles of Good AI Practice in Drug Development」という10の高次原則を公表しました。
非臨床試験、臨床試験、製造、市販後の安全性監視まで、医薬品開発のライフサイクル全体でAIを使う際の考え方を示したものです。
内容には、人間中心の設計、リスクに応じたアプローチ、明確な利用目的の設定、データガバナンスと文書化、モデルのライフサイクル管理などが含まれます。
正式な業界向けガイダンスではありませんが、両当局の考え方の方向性を示す重要な文書として受け止められています。
これに先立ち、FDAは2025年1月にも「Considerations for the Use of Artificial Intelligence To Support Regulatory Decision-Making for Drug and Biological Products」という草案ガイダンスを公表し、AIモデルの信頼性をリスクベースで評価する枠組みを提示していました。
EMAの複数年AIワークプランとreflection paper
EMAは、それより前から段階的にAI関連の考え方を積み上げてきました。
2024年9月には「Reflection paper on the use of Artificial Intelligence in the lifecycle of medicines」を確定し、創薬から非臨床開発、臨床試験、製造、市販後まで幅広くAIの活用について見解を示しています。
さらにEMAとHMA(欧州医薬品規制当局責任者会議)は、2023〜2028年の複数年AIワークプランを策定し、継続的にAIオブザーバトリーレポート(2026年6月にも公表)を出すなど、単発の文書ではなく継続的な体制でAI対応を進めています。
| 規制当局 | 主な取り組み | 公表時期 |
|---|---|---|
| EMA(欧州) | reflection paper(AIのライフサイクル活用に関する見解) | 2024年9月確定 |
| FDA(米国) | 草案ガイダンス(AIモデルの信頼性評価の枠組み) | 2025年1月 |
| FDA・EMA共同 | Guiding Principles of Good AI Practice in Drug Development(10原則) | 2026年1月 |
| PMDA(日本・自組織向け) | PMDA業務に対するAI活用行動計画 | 2025年10月 |
| PMDA(日本・業界向け) | GxP業務のAI活用に関する基本的考え方 | 2026年度中に公表を検討(今回のニュース) |
こうして時系列で並べると、PMDAが業界向けの考え方を示すのは、FDA・EMAの動きから1年前後遅れる可能性がある、という位置関係が見えてきます。
日本のPMDAは国際的に見て後発だが、先行事例を踏まえて設計できる立場
「遅れている」と聞くとネガティブに感じるかもしれませんが、私はそう単純には捉えていません。
後発であるということは、FDA・EMAが積み上げてきた原則や、実際に運用してみて出てきた課題を参照しながら、日本の制度に合わせて設計できる立場でもあるということです。
実際、日本の規制はICH(医薬品規制調和国際会議)を通じて国際整合を重視する傾向が強く、今回のPMDAの検討も、FDA・EMAの動きを完全に無視した独自路線になる可能性は低いと私は見ています。
GPMとして海外拠点とやり取りしていると、規制の考え方が国ごとに微妙に違うだけで実務の負担が一気に増えることを痛感します。国際共同治験が増えている今の流れを考えると、PMDAがFDA・EMAとある程度整合性のある考え方を示してくれる方が、現場としてはありがたいというのが正直な気持ちです。
PMDAのAI活用方針がCRAの実務にどう波及するか
結論から言うと、モニタリングレポートや治験関連文書の作成支援でAIを使う際の「どこまでなら使ってよいか」という線引きが明確になる可能性が高いです。
ただし、最終的な確認・判断・責任がCRAに残るという構図自体は変わらないと考えられます。
治験関連文書(プロトコル・同意説明文書等)の作成支援へのAI活用
治験実施計画書(プロトコル)や同意説明文書は、これまでも定型フォーマットに沿って作成される部分が多く、AIによる下書き支援との相性がよい領域です。
PMDAが基本的考え方を示すことで、こうした文書作成でAIをどこまで使ってよいか、企業側のSOP(標準業務手順書)整備が進みやすくなると予想されます。
こうした流れは、骨太方針2026で示された国際共同治験の倍増方針とも文脈がつながります。
治験の件数自体を増やそうとする政策的な後押しがある中で、文書作成の効率化は現場にとって歓迎される変化になりそうです。
モニタリングレポート・SDVでのAI活用がGxP上どう位置付けられるか
モニタリングレポートの下書き作成や、SDV(原資料との照合)の効率化にAIを使う動きは、既に一部のCRO・製薬企業で始まっています。
ただし、これらはGxP業務の中核に近い領域でもあるため、「AIが生成した内容をどう検証し、誰が承認するのか」というプロセスが規制上どう扱われるかは、企業ごとに手探りの状態が続いてきました。
PMDAの基本的考え方が示されれば、この手探り状態に一定の指針が加わることになります。
過度に慎重すぎたSOPが緩和される会社もあれば、逆にこれまで曖昧だった検証プロセスが明文化されて厳格になる会社も出てくるかもしれません。
一方で、GLP試験の信頼性を巡るデータインテグリティ問題が業界で議論されていることからも分かる通り、記録の信頼性・追跡可能性は今後も規制上の重要テーマであり続けます。
AI活用が進むほど、「誰が・いつ・どう確認したか」を記録に残す意識は、むしろ重要性を増すと私は見ています。
最終判断者・責任者はCRAであることは変わらない
ここは正直にお伝えしておきたい点です。
AI活用の基本的考え方が明確になったとしても、それは「AIに任せてよい」という意味ではありません。
むしろ、AIをどう使ったかの記録・検証プロセスが明文化される分、CRAに求められる説明責任は増える可能性すらあります。
| AI活用が想定される業務 | PMDA方針明確化後の見込み | CRAに引き続き求められる役割 |
|---|---|---|
| 治験関連文書のドラフト作成 | SOP整備が進み活用しやすくなる | 内容の医学的・科学的妥当性の最終確認 |
| モニタリングレポートの下書き | 定型部分の効率化が進む | 現場観察・臨床的判断の記述と承認 |
| SDVでのデータ突合支援 | ツール活用の線引きが明確になる | 逸脱・不整合発見時の判断と対応 |
| 症例データの整合性チェック | 自動チェックの適用範囲が広がる | 最終的な品質保証・依頼者への報告 |
私がGPMとして感じているのは、AI活用のルールが整理されるほど、「ルールの中でどう判断するか」を任せられる人材の価値が上がるということです。
ルールがグレーだった時期は、慎重な人ほど何も使わずに手作業を続ける傾向がありましたが、指針が明確になれば「使うべき場面」と「人が確認すべき場面」の切り分けがしやすくなります。
AI活用方針の明文化がCRAの転職・キャリア市場に与える影響
結論から言うと、規制の明文化はCRAにとって悪い話ではありません。
企業側がAIツール導入をこれまでより進めやすくなる分、AIツールの活用経験や、規制動向を理解した上での業務改善提案ができる人材の市場価値は上がっていくと考えられます。
「AIに使われる」CRAと「規制を理解してAIを使いこなす」CRAの差
以前の記事でもお伝えした通り、CRAの業務のうち定型的な部分はAIによる効率化が進みやすく、対人折衝や臨床的判断はAIに代替されにくい領域です。
今回のPMDAの動きは、この構図に「規制上、どこまでAIを使ってよいか」という新しい軸を加えるものだと私は理解しています。
今後評価されやすいのは、単にAIツールを使える人ではなく、「なぜこの場面でAIを使ってよいのか(あるいは使うべきでないのか)」を規制の観点から説明できる人です。
これは資格や特別な勉強が必要な話ではなく、社内で導入されるAIツールやSOP改定について、日頃から「なぜそうなっているのか」を意識して仕事をするところから始められます。
転職活動でPMDAのAI方針の動きをどう語ると評価されるか
転職活動の場面では、こうした規制動向を「知っているだけ」ではなく、「自分の業務やチームにどう関係しそうか」まで一歩踏み込んで話せると、面接での印象は大きく変わります。
たとえば「PMDAがGxP業務のAI活用方針を検討していることを知っており、自社でもAIツール導入のSOP整備に関心を持っている」といった形で語れると、業界動向への感度の高さが伝わりやすくなります。
もちろん、規制動向や求人での評価のされ方は企業やポジションによって差があります。
自分の経験がどう評価されるか気になる方は、一度CRAが登録すべきおすすめエージェントで客観的な評価を受けてみることをおすすめします。
エージェントは複数のCRO・製薬企業の採用動向を横断的に見ているため、自分では気づきにくい市場価値の変化を教えてもらえることがあります。
規制動向・AI活用への感度も含めて、あなたの経験を客観的に評価してくれます
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PMDAのAI活用方針についてよくある質問
PMDAはいつAI活用の基本的考え方を公表しますか?
2026年7月24日の審査・安全業務委員会の時点では「今年度中にも公表する方向で検討している」段階であり、確定した公表日は明らかになっていません。正確な情報はPMDA公式サイトの発表を随時ご確認ください。
PMDAの「AI活用行動計画」と、今回の「AI活用に関する基本的考え方」は同じものですか?
異なるものです。2025年10月に公表された行動計画は、PMDA自身が審査・安全対策業務にAIを導入・活用するための計画です。一方、今回7月24日に検討状況が明らかになった基本的考え方は、製薬企業・CRO側のGxP業務におけるAI活用について示される予定のものです。
FDA・EMAの動きと比べて、PMDAの対応は遅れていますか?
公表時期だけを見ると、FDA・EMAが2026年1月に共同で指導原則を出しているのに対し、PMDAは基本的考え方を年度内に公表する方向で検討している段階のため、後発と言えます。ただし、先行事例を踏まえて日本の制度に合わせた設計ができる立場でもあり、単純に「遅れている=不利」とは言い切れません。
この動きはCRAの転職市場にどう影響しますか?
規制上の指針が明確になることで、企業側がAIツールの導入を進めやすくなり、AIツール活用経験やSOP改定への理解がある人材の市場価値が上がる可能性があります。一方で、医師との対話力や臨床的判断力といった、AIに代替されにくいスキルの重要性は引き続き高いと考えられます。
CRAとして、今からどんな準備をしておくべきですか?
特別な資格取得は必須ではありませんが、自社で導入されているAIツールやモニタリング支援システムを積極的に使ってみること、PMDA・FDA・EMAなど規制当局の公表情報にアンテナを張っておくことが有効です。転職を検討する場合は、こうした業界動向への理解を、エージェントとの面談で言語化してみることをおすすめします。